花粉症、アトピー、喘息、アレルギー性鼻炎、結膜炎などアレルギー疾患に対する理論的考察と具体的実践
私はアレルギー患者です。医者でもなければ研究者でもありません。ただアレルギーの経歴は四半世紀以上ですから、アレルギーの専門家と呼べるかもしれません。そんな専門家から、現代病といえるアレルギー性疾患を軸に思索を繰り返すとそこには様々な矛盾、問題点に満ち溢れていると痛感しました。私がその問題を考え続けることで辿った道程にある様々な事柄は決してアレルギー患者だけに関係しているものではなく、私たち全員に関係していることだという結論に至り、それらを知ってもらうためにキーボードを叩きましたのでそれを読んでいただければ幸いです。
ただこれを読む際にいくつか注意事項があります。まずこの内容に関して、私個人の勝手な妄想、形而上学的世界を含んでいることを了承していただく必要があります。またこれを読む前にいくつかのアレルギー関連書籍に始まり、免疫学等の書籍も読んでいたほうがわかりやすいかもしれません。そうかといってアレルギー関係の資料やデータは多数ある一方で、どれもこれも信用できるのかといえば疑問がありますので、できるだけ引用しないようにしてはいますが、ある程度アレルギー疾患の過去と現状は知っておいていただくほうが読みやすいと思います。
アレルギーを治したい人々のなかには理屈なんてどうでもいいと思い、実践編から読もうとするかもしれません。しかしアレルギーに対して少しでも理解を深め、冷静に行動できるようになるのに欠かせないですし、変なアレルギービジネスに引っかからないためにも重要です。そもそもアレルギーという病気を治すということはどういうことなのかという事そのものが問題なのです。
またアレルギーに関する言葉自体を定義し説明しなおすなど理論編はまわりくどく説明不足のため分かりにくいところもあるかもしれませんが、ミステリー小説を読むような軽い気持ちでもいいので読んでいただければ幸いです。
実践編に関して
多くのアレルギー疾患の場合、現代医学は役にたたず、民間療法はどれも怪しく映ります。そんな中で患者は自分の判断を強く求められていますが、アレルギー関連の情報は氾濫するばかりで、あれもこれも試していては現実的ではなくなります。ですから理論編を基に、具体的にどのようにしていけばよいかを示せればと思っております。理論編は意味不明かもしれませんが、実践編はわかりやすく書いたつもりですので、安心して読んでいただけるかと思います。
はじめに
理論編
私の病歴
アレルギー諸説と消去法
ダニアレルギーと洗濯用洗剤
アレルゲンがゲンインか
有害なアレルゲンと無害な抗原
言葉の定義
栄養説と歴史的事実
素因と米アレルギー
免疫と同値類
過剰衛生説は正しいのか
バケツと確率
アジュバントと免疫毒物
胸腺と環境汚染
萎縮と水俣病
環境汚染という仮定にある矛盾
アトピー発症の引き金
はじめに簡単にではありますが、私の病歴を紹介しておきたいと思います。最初の症状は、物心がつくまえから喘息持ちで、症状は軽めでゼーゼーと呼吸がしづらくなる程度でした。そのあと結膜炎が出易くなり、小学校一年で友達の家で飼っている猫で、目が赤くなってしかも痒くなったことから猫アレルギーであることを自覚しました。それから小学校中学年くらいから、鼻炎があまりにも酷くなったので耳鼻科にいきますが、行く病院によって診察結果が「副鼻腔炎」、「アレルギー性鼻炎」と違い、「副鼻腔炎」と診断した医者は手術を勧め、アレルギー性鼻炎と診断した医者は基本的に鼻洗浄することしかしませんでした。今思えばアレルギー性鼻炎の重症化から合併症を併発し副鼻腔炎を患ったのだと思います。小学校高学年では鼻炎がひどすぎて、学校に行くのもつらいので冬場、特に三学期になるとよく休んでいました。また小学生の頃、交友関係の少ない僕の友達にすら皮膚炎で悩んでいる子が二人はいました。アレルギーという病気は当たり前のものだという意識すらありあまり疑問にも思っていませんでした。
中学生に入ると良くなり、症状といえば時々外泊したときに民宿のような場所ですと就寝時に喘息が出る程度でそのほかはほとんどアレルギー症状がなく小学生の時には必ずティッシュを持ち歩いていましたがそれも必要なくなりました。
ですが高校二年生になると夏に汗疹になり、冬場になると皮膚の乾燥が酷くなり肘や膝の内側から皮膚炎の症状が出始め、あまりにも痒くて寝られないなど生活に影響がでるほどになりました。以後どんどん悪くなり二年ほど経つと症状が首や顔など全身に出るようになりました。さらにここまでくると、鼻炎、結膜炎、皮膚炎、喘息が一通り出るようになり、場合によっては一日に複数の症状がでることもありました。自作の保湿剤なしでは乾燥しきって皮膚が剥がれてくるような状態になりました。その頃からこれではまずいと思い、アレルギーに関して本気で調べるようになり、様々な試行錯誤の結果、現在ではIgE抗体は少し多めですが、乾燥肌が治り、炎症が起きても軽い蕁麻疹程度で悪化せず、痒みも少なくなり掻いても掻破しなくなりました。アレルギーかどうか見分けることができないほどに症状は回復しました。
その課程では無駄なこともありましたが、論理的にアレルギーの原因とは何かを考え、その考えを基に実践に移す事が重要であり、現在のアレルギー疾患に関する常識は矛盾、誤解だらけで原因究明は程遠いように感じましたので、これらの体験を通して考察したことを書いておきます。
それでアレルギーを治そうと思い、アレルギーについて調べてみますと現代においてこれほどありふれた病気であるにもかかわらず研究者や医者、その他大勢の人が言っていることがバラバラで支離滅裂な病気も珍しいことに気付かされます。その一例を挙げますと
アレルゲン増大説、遺伝説(素因説)、過剰衛生説(寄生虫排除説など)、環境汚染説(大気汚染、食品添加物説など)、栄養失調説(食の欧米化、亜鉛不足、ビオチン不足、リノール酸過剰、過酸化脂質説、)、活性酸素とフリーラジカル説、ストレス説、また各症状、アトピーの場合は水道水塩素説、合成洗剤説 etc・・・
まだ他にありますが代表的なものはこれくらいでしょうか。それにしてもよくもこれだけ仮説が立てられたものだと感心してしまうのですが、これだけ説があってもいまだ結論は出ていません。むしろ結論がでないがためにこれだけの仮説が生まれたのでしょう。アレルギー関連の書籍にはよく「群盲、象を撫ず」という仏教の経典から引用された諺を用いることが多いですがまさにその通りです。ただ私が問題だと感じたのは、全ての仮説が象の体のどの部分なのかというちゃんと議論がなされていないことだということです。主張する人々はみなこれが頭だ、いやこっちが頭だといい、それら主張をそのまま総合するとキメラのような何だかよくわからない怪物になってしまいます。私が最初に考えたのはどれが頭でどれが尻尾なのかはっきりさせようとしましたので、それらを簡単に理論編の前半部に紹介してみようと思います。
さらに治療法を挙げますとこれは民間療法のものまで含めますと全てを挙げることができないほどありますが、代表的なものを挙げてゆきますと
各原因説の解決、薬物療法(ステロイド、漢方薬など)、アレルゲン除去、食事療法(絶食療法、アレルゲン除去食など)、減感作療法、水療法(温泉療法、アルカリイオン水、強酸性水など)、塩療法(天然塩、にがりなど)、心理療法(自律神経系に関するもの)などがあります。
このように治療法は仮説の数よりもさらに増えてしまっています。さらに議論を複雑している要因となっているのは、ある治療法もその理論的解釈は間違っていてもそれなりに効果や実績があったり、アレルギー発症原因の仮説通りに治療がうまくいかないなど様々な事が起きたりしています。多分そこには本当の原因を知る上でのヒントがあるのでしょう。アレルギーの原因を考える際にその原因の連立方程式を解くときのように、各諸説や治療法を条件として、答えを導くのに利用してみたいと思います。
そしてこれらの説が果たして正しいのか論理的に調べ、消去法などでいくつか答えを絞ると共に、理論編の後半では辿り着いた説と他の説との検証をしたいと思います。
さてアレルギーについて考えてみるといいましても範囲が広く、また様々な症状があるなかでどういった点から考えてみればよいかといえば、まずアレルギーに関してもっとも問題視されていて多くの人が当たり前だと思っている点から攻めてみることにしましょう。
「アレルギーといえば」というお題を出すと色々なものを連想してしますが、そのなかで必ずトップ3にはいるであろうものが「ダニ」です。ダニアレルギーの人はダニを敵視しがちですが、ダニは様々なものを分解する自然界の掃除屋であり、その様々な種類のダニがいて自然界は成立しています。私たちの家にいるダニも家の中にあるフケや埃などを食べて生きております。
さてダニアレルギーとは一体どういうものであるかと言うことに関して多くの人は漠然としたイメージしかもっていないでしょう。ダニアレルギーとはとりあえず、私たちの体の中にある免疫系というものがダニに過剰に反応してしまう事としておきます。免疫系は抗原と呼ばれるタンパク質に反応する機能を持っています。ではダニの中にあるどのようなタンパク質に私たちの免疫系が反応しているのでしょうか。もちろん人によって違うかもしれませんが、一般に多いのがダニの消化酵素です。この消化酵素はダニが生きている間は排泄物として、ダニが死ぬと死骸から出てきます。これがダニアレルギーを引き起こすタンパク質であることがわかっていて、こういったアレルギー症状を引き起こす性質の物をアレルゲンと一般的には呼んでいます。
ダニは様々な物を分解するために酵素を持っていますが、その中でタンパク質を分解して栄養とするための酵素をプロテアーゼと呼んでいます。私たちの免疫はこのプロテアーゼに反応して、その結果ダニアレルギーを起こしているのです。しかしこういったものがダニ以外は持たないのかといえばそうではなく、実は現代の科学は微生物などが持っている、もしくは作らせて様々な酵素を造り出して製品化しています。そのなかで身近なものは洗剤などです。特に洗濯用洗剤にプロテアーゼを入れておけば、衣類についたタンパク質汚れを分解して汚れを落とせると考え、利用されているのです。しかしプロテアーゼ自体がタンパク質であり、アレルゲンとなりうるため人によっては、洗剤アレルギーを起こしている場合を考慮しなければなりません。もちろんプロテアーゼと一言で言いましても何種類もあり、全てがアレルゲンとなっているわけではないでしょう。
ここで少しアレルギーの原因について考えてみましょう。アレルギー原因説の中にアレルゲンが増えたからアレルギーになる人が増えたのだというアレルゲン増大説があります。これは統計的には正しいです。ですがこの統計とは相関関係を数学的に証明しただけであり、アレルゲンの増大したことがアレルギーの増えた原因という因果関係の証明には全くなりません。
ではもしアレルゲンの増大がアレルギー増大の原因だと仮定しますと、アレルゲンを含む洗濯用洗剤もアレルギー増大の原因だということになります。もしくはアレルゲンを含む洗濯用洗剤がアレルギー増大の原因でないとするとアレルゲンの増大がアレルギー増大の原因でないかのどちらかになります。もちろん酵素を製品化する際に安全かどうか様々な検査をしており、その結果を信じるならばアレルゲン自体がアレルギー増大の原因ではないということがいえます。つまりアレルゲン増大説と酵素の安全性を確かめる検査はどちらかが間違いだということになります。
いずれにしても、アレルゲン増大説は医師も含めて一般的に言われていることですから、まずダニアレルギーの人が沢山いるなかでこのような商品を当たり前のように売ってよいのでしょうか。またどれだけの人が知らずに使い、アレルゲンを撒き散らしていることでしょうか。
洗濯用洗剤以外にも使われているプロテアーゼを含む製品で問題がありそうなのは、コンタクトレンズ用洗浄液にもタンパク質分解酵素を含むものがあります。僕は眼鏡派なので使ったことがありませんがこれも同様にアレルギー症状をお持ちの方は使わないようにするべきでしょう。眼でアレルギーが起きますと、ボクサーのように二重まぶたが一重になるほど腫れ上がり、さらに症状が悪化しますと視力低下、網膜剥離、失明の可能性すらあります。コンタクトでなんらかの異常を訴える人が増えているそうですがとても気になります。
ダニアレルギーについての考察はとりあえずここまでにしておき、では別のアレルギーについてはどのようなことがいえるのでしょうか。
補足 ・・・ 相関関係と因果関係という言葉を使いました。この二つの言葉の意味について、説明しておきます。
「風が吹けば桶屋が儲かる」という諺<ことわざ>をご存知でしょうか。「風が吹くと砂埃で盲人が増え、盲人は三味線を弾くのでそれに張る猫の皮が必要になり、猫が減って鼠が増え、鼠が桶を囓り、桶屋が繁盛する」や「風(台風)で沢山の人が死に、桶屋(棺桶屋)が儲かる」など色々なものがあるそうですが、これらに共通していることは、ある物事、現象の間に因果関係があるということです。ですが最初の例ではあまりにも現象の間が長く、因果関係はあるかもしれませんが風が吹くことと桶屋が儲かるという二つの現象には誰もが関係はないだろうと思うわけです。でも二つ目の例では誰もが納得するでしょう。こういったように様々な現象にどれほど関係があるのか、それを相関関係と呼び、統計学を用いて調べることができます。
もっと身近な例を出してみますと、タバコを吸うとガンになるかを知るのに、発癌性物質が含まれていれば有毒で、因果関係があることはわかります。ですがタバコを吸うこととガンになることの間にどれほど関係があるかはわかりません。それを知るために十分なサンプルを採って、相関関係を調べることでどれくらい有害かわかるのです。現在タバコが先進諸国のほとんどで喫煙者が肩身の狭い思いをしているのもこの科学的手法によってはっきりと因果関係と相関関係という関係がわかっているからなのです。
アレルギー関連の情報では必ずといっていいほどアレルゲンが増えたからアレルギーが増えたのだという説明がなされます。さきほどはダニアレルギーについていいましたが、これは他のアレルゲンについても同様に考えるとどうなるでしょうか。例えば、「花粉症が増加したのは花粉が増えたからだ。だから花粉を飛ばす杉を伐採しろ」と考える人がいますが、これなども花粉が増えたことが花粉症の増大を招いたと考えるアレルゲン増大説肯定している結論です。これは花粉やダニに関してのみならず食物アレルギーのタンパク質過剰摂取説も根底の部分では全く同じです。では本当にこの結論は正しいのでしょうか。洗剤の安全性以外にも反例を一つ挙げてみましょう。それはアレルギーの治療法に減感作療法というものがあります。これは患者がアレルギー反応を起こしている抗原を免疫に反応させることで治療するという方法です。成功率はそれほど高くありませんが、これで治るならばアレルゲンがアレルギーの原因であるどころかアレルゲンでアレルギーが治るはずなのです。
もう少し詳しくいいますと減感作療法とは例えばスギによる花粉症に悩む人の免疫に花粉を反応させ(このことを感作という)免疫に慣れさせるという根治療法のことで、減感作療法自体はなんら新しいものではなく、昔はウルシでかぶれるのを予防するためにウルシを口にしたそうです。それにしてもなぜアレルゲンを体内に入れ続ければ治るのでしょうか。もし仮にこれが正しいとするならば、ダニアレルギーだけでなく花粉アレルギーである花粉症でもアレルゲン増大説と矛盾することになります。それでも花粉増大説を肯定し、「花粉が増えれば新たに花粉症患者が増える」というならば、それなら減感作療法は治療法とは呼べないでしょう。
A,花粉で花粉症になる。
B,花粉で花粉症が治る。
この二つは明らかに矛盾しています。もしこの二つが事実であるならば原因は花粉ではなく別の要因があるということになります。さらに無症状の花粉症患者に抗原を入れると症状がでにくく、予防になることも統計的に有意であるという実験結果もあります。ですから花粉に対する容疑は冤罪ということになるでしょう。さらに食物アレルギーの一例を出しますと米アレルギーの人がいますが、アレルゲン増大説では米を食べ続けるとアレルギーになるはずです。
このようにアレルゲン増大説ではありとあらゆるアレルゲンについてどのように説明すればよいでしょうか。どうして昔はアレルギー患者がほとんどおらず、現代になってアレルギー患者が増えたのでしょうか。そしてこの不可思議な現象はダニや花粉について考察しましたが、ハチアレルギーなどのような例外を除いて、他のほとんどのアレルギーについて言えることです。
このように分析してゆくと、一つずつアレルゲンとアレルギーには相関関係はあるかもしれませんが、各抗原を一般化して考えますと直接的因果関係はないと考えるべきで、アレルゲン増大説は否定されます。誰でも少し自分の頭で考えてみればこれらの思考様式がおかしいことに気が付くでしょう。アレルゲンを犯人に仕立て上げようとしているのは我々の願望がそうさせているようにさえ思えてきます。次はアレルゲンや抗原といった物に関してもう一度考え直してみます。
補足 ・・・ 相関関係と因果関係についてもう一度説明してみたいと思います。前の補足では因果関係があっても、相関関係があるかどうかはわからないという例を出しました。ではその逆はどうでしょうか。つまり相関関係があれば因果関係があるのかということです。例えば身長という数値(もしくは現象)と体重という数値の間には誰が考えても相関関係があることはわかります。身長が伸びれば体重も増えますし、体重が増えれば身長も増えます。
ではどちらが原因でしょうか。体重が増えたことが原因で、結果は身長が伸びることでしょうか。身長が伸びたことが原因で、体重が増えたことは結果でしょうか。考えてみればわかりますがどちらの間にも因果関係が無条件に与えられているわけではなく、私たちの体格というものがある程度決まっていて、その結果として、二つの数字(現象、事象)である体重と身長に相関関係が生まれたことになります。この相関関係が約束されているのは別の因果関係があるからなのです。もし私たちの体型が一定でなく、軟体動物のように自由に変形するか、あるいは成長する過程で昆虫のように変態してしまうのであれば、身長と体重の間に相関関係はなくなります。よってある二つの事象に相関関係があってもその二つの事象の間には因果関係があるとは限らないということです。相関関係が保証されているならその保証している何かを見つけてこなければなりません。このような思考様式が多くのアレルギー諸説に欠けているのが問題なのです。
アレルギーに関して議論するにあたってアレルゲンと抗原という言葉について決めておきます。ます抗原というのは免疫系が反応することができる分子のことです。一般には抗原(非自己抗原)とアレルゲンを区別して使いませんが、アレルギーという病気が抗原の増大など関係がないというところから問題設定しているわけですから、抗原とアレルゲンという言葉を分けて使うことにします。よって、ある抗原に対してアレルギー反応を起こす様になってしまった時のその抗原をアレルゲンと呼ぶことにします。
この様に考えますと、アレルゲン増大説では「アレルギーの原因はアレルゲンの増大が原因だ」といっているわけですが、アレルゲンという言葉はアレルギー反応を起こすことというように定義していますから、どっちが定義なのかわからなくなります。わかりやすくしますと「アレルギーの原因は「アレルギー反応を起こすようになってしまった、ある抗原」の増大が原因だ」となります。これはまるで卵が先か鶏が先か、と同じ構造が見てとれます。アレルゲンの定義を過去形ではなく現在形や未来形にしてみても同様です。
さてアレルギーや免疫系に関しては何も言っていませんが、とりあえず「アレルギーは有害」と仮定してみますと花粉症はアレルギーで、「花粉症は公害」と言う人のなかに「国への訴訟、杉の伐採」を提案する人がいます。花粉は有害かと聞かれたら、花粉症で仕事や勉強が手につかないなどの損害があれと「有害」という答えになるのかもしれませんし、「公害」といえるのかもしれません。
しかし花粉症が増加した原因が花粉のせいでなければなりませんがそれはなにもわかっていませんし、先ほども述べたように減感作療法などの花粉のもつ抗原そのもので治るのであれば、花粉症の原因は花粉ではなくなり、アレルギーになる原因が別にあるため無害な抗原が有害なアレルゲンになったと考えるべきで、害のあるなしで公害かどうかを言うのは実に短絡的で危険です。
エイズ(AIDS、後天性免疫不全症候群)とアレルギー・・・ アレルギーにおける「有害」についてもう一度わかりやすく説明してみたいと思います。アレルギー性疾患において、発症機序(メカニズム)はどのような構造になっているのでしょうか。例えばエイズという病気はHIVというウィルスが免疫細胞であるヘルパーT細胞(Th細胞)上にあるCD4という分子を目標にしてT細胞に侵入することで感染しますが、その時点ではキャリアと呼ばれる状態になるだけで症状はでません。
HIVが潜伏期間を経て一旦増殖を始めると正常なTh細胞に入り込んでは細胞を壊して増え続け、その結果Th細胞の機能が弱まり、Th細胞の指令がないとB細胞が抗原に対して抗体を作らなくなり、免疫不全になることで、日和見感染と呼ばれる通常では問題ないような弱い病原体による感染症などの病気を引き起こすのです。もちろんこの場合は病原体が害をもたらした原因ですが、発症の原因はHIVといえます。アレルギーをAIDSと同一視してみるなら、アレルゲン増大説以外ではアレルゲンはあくまで病原体と同じで原因ではなく、HIVのような根本的原因は別のところにあると考えると各アレルギー諸説のズレを理解しやすくなります。
本書において独特な言葉遣いに関する約束事である、言葉の定義について述べておきたいと思います。
以前、陰陽師というのが流行し映画にもなりました。陰陽師が活躍した日本の平安時代に限らず、昔の人達は病気が『悪霊』のせいだと考えていました。現在の科学ではそれは完全に否定され、微生物、ウィルスなどの病原体、遺伝など様々な要因があることがわかっています。しかしだからといって当時の悪霊という考えを全て無視していいかというとそうはなりません。
なぜなら当時の人たちが考える『悪霊』のイメージのなかには
1、『悪霊』は見えない。
2、『悪霊』は人の口から出入りする。
3、『悪霊』は人を病気にする。
4、『悪霊』は空気中を漂い、人にうつる。
というのがあります。
この四つの悪霊の性質の『悪霊』という部分を『ウィルス』という言葉に置き換えてみてはどうでしょうか。飛沫感染するインフルエンザウィルスもこの条件も完全に満たします。つまり悪霊と呼ぼうがウィルスと呼ぼうがこの四つの条件に関して同じなのです。これは特別な物の考え方ではありません。
数学のユークリッド幾何における公理でも同じ考え方をします。ヒルベルトがユークリッドの公理にある『点』、『直線』、『面』という言葉を『コップ』、『椅子』、『机』という言葉にかえても問題ないと言ったことと先ほどの『悪霊』の例えは全く同じ事なのです。
このように言葉の定義が明確なればそこから論理展開でき、『悪霊』の性質から、悪霊とはなにか、そしてその治療法や対処法はどうすればよいかを知ることになります。例えば『悪霊』というものがなんであれ、上のような性質を持っているのであれば、患者の隔離などが論理的な解決策なはずで、そこから祈祷などの治療法は生まれてきません。もちろん祈祷という行為になんら効果がないといっているのではありませんが、少なくとも『悪霊』の定義からはそのような治療法を導くことは不可能でしょう。(悪霊の定義に、「死骸から『霊魂』が抜けて、病気を引き起こす『悪霊』になる」という条件を加えると、『悪霊』を祈祷かなにかで成仏させて『霊魂』にすれば、病気が治るという論理は通るでしょう)
またアレルギーの『原因』が様々な仮説からどのような性質を持つものでなければならないかを逆算することも可能で、例えば『悪霊』が見えないで空気中を漂うのは十分に小さいからだなどといった感じです。
このようにアレルギーに関して議論する際にもアレルギーの『原因』がもつその性質から推理してゆくことは無駄ではありませんし、むしろ『原因』を特定できなくても治療法を考えることもできるということを示すことが本書の目的となっています。
それではアレルゲン増大説に限らずアレルギー諸説にある因果関係を否定し消去してゆくために、アレルギーが増大した原因に辿り着くためにどういった条件がよいでしょうか。例えば昔はアレルギーという病気は全くと言っていいほどなく、現代になって急増し多くの人がアレルギーを患っているという事実は誰もが認める条件でしょう。そしてまだアレルギーがない国々はどちらかといえば発展途上国が多いというのも信頼できる事実として条件になるでしょう。それとアレルギー症状の違いはあったとしても、乳児から最近ではお年寄りまでアレルギー症状を訴える患者が増えているというのも間違いない事実です。しかしアレルギーを持っているからといってアトピーなどの症状がでるとは限らずまたアトピーなどの症状があるからといってアレルギーがあるとは限らない点も注意する必要があります。一般的にはアトピーというとアレルギー性皮膚炎と区別しませんが、もし原因が別ならばアトピー性皮膚炎とアレルギー性皮膚炎は区別して呼ぶことになります。
さて栄養失調説を歴史的事実に照らし合わせてみるとどうなるでしょうか。さきほども述べたように歴史的事実からアレルギー症状で悩む患者が現在のように増えた事は疑いようのない事実で、アレルギーは古今東西あったかもしれませんが現代ほどではないでしょう。さらに栄養失調説に関しては否定的な条件がいくつもあり、一つは栄養失調に関する病気というものは現在の栄養学の発達によってかなりの栄養失調に関する疾病は既に知られています。仮に見つかっていない栄養素があると仮定しても、飢餓と隣り合わせであった歴史と未だ飢餓や豊富な食料を得ることができないような発展途上国と栄養不足とは基本的に無縁な先進諸国とを比較して考えますと、特定の栄養素の欠乏や失調説は特別肯定する理由はありません。また亜鉛やビオチン説などもアレルギーに限らず慢性疾患の場合は特定の栄養素が欠乏する可能性があり、それらを補充すれば改善する可能性はありますが、そもそもの原因とはいえません。例えるなら出血を伴う慢性疾患になれば、鉄分が不足するであろう事は誰でも推測できるのと同じです。ビオチンに関しても本来ならば腸内細菌がつくりだすはずなのですが、不足しているならばそれは食品の保存料や抗生物質などの薬を使いすぎたことで腸内細菌のバランスが悪くなったと考えるべきです。また核酸不足がアレルギーになるという説までありますが核酸が不足することなどありえません。
栄養失調説では乳児のアレルギーについて考えれば一体なにが栄養不足を招いているのかということになります。乳幼児のアレルギーは日本では1960年代頃から増加しており、栄養失調説ではかなり説明が難しくなります。現代になって昔より特に減少した栄養素でなければなりません。
こういった様々なアレルギー諸説の因果関係はここでは否定してゆきますが、相関関係に関する否定ではないことを忘れてはいけません。むしろこういった諸説の中にある相関関係を別の因果関係によって説明することこそ最終目的なのです。
さてアレルギー体質やアトピー素因なる言葉はアレルギーでない人も聞いた事があるでしょう。アレルギー関連の書籍などには必ず見かける用語ですがさてそれでは素因というのはどういう意味でしょうか。アレルギーの原因を考える上でさきほど乳児のアレルギーが観察され、それを説明するのには栄養失調説では難しいといいましたが、乳幼児がアレルギーになっていることから考えれば当然、遺伝子説や素因説なるものが生まれてくるのは当然でしょう。なぜ遺伝説や素因説が必要かと言えば、外部要因にさらされていない乳幼児のアレルギー発症について説明が困難になるからでしょう。例えば成人の花粉症などは生活習慣やストレスなどの理由をつけたとしても、乳幼児の食物アレルギーなどを説明するのに花粉症と同じような説明ができないことが多いため、曖昧な素因という言葉を使っています。
またこういった説をとなえなければならない小児科医から見ると年齢が上がるにつれ、アレルギーの症状が次々に変化してゆく現象を見ることになります。このようなアレルギー性の症状が変遷してゆくことをアレルギーマーチと呼びます。もちろんアレルギー体質の人が必ずアレルギーマーチを経験するとは限りませんし、その変化の仕方もある一定の傾向はあるにしても細かいところは人それぞれ異なります。それらの変遷がなぜ起こるのかという説明もできなければ、その原因説が正しいと採用することはできません。
もちろん乳幼児のアレルギーと他のアレルギーを別の原因によるものだと考えることもできますが、乳幼児のアレルギーに関してもまともに説明できていないのであればまずそちらも含めて考察した上で原因を見つけてから成人のアレルギーにも当てはめて考えるべきでしょう。
では素因説、遺伝説は正しいのでしょうか。例えばアレルギー患者はアレルギー反応を起こしやすい体質でそれは遺伝的に決まっている、アトピー素因はアトピーになりやすい人とそうでない人がいますし、確かに統計的には素因と呼ぶなにかがあり、家族間で相関関係があるのは間違いありません。しかし遺伝情報はたった100年くらいではほとんど変わりません。つまりもし遺伝が因果関係を握っているのであれば、アレルギー患者の増大を考えればそれほど多くの人の遺伝子が変わったことになりますが遺伝学的にそれはありえません。
話を元に戻しますと乳幼児のアレルギーはその乳幼児の生活習慣に原因を求めることは難しいですし、アレルゲンとなるダニ、カビ、花粉などは人間が存在する前から存在しましたし、さらに米や小麦、大豆、卵、乳など主食となるようなものにまでアレルギーを持つ人が増えていますがこれらのアレルゲンがアレルギーの原因といえるでしょうか。ここに疑問を持つならば相関関係はあっても因果関係はないと考えるべきでしょう。免疫も生き残るために多様性があるとしても、米や大豆など主食ともいえるものでアレルギーがでるのを素因といって片付けるのはあまりにもおかしいでしょう。
話を日本人に限定してみると、数千年前、中国大陸から渡来人が稲作を伝えて以来、日本人はかなり穀物に依存していくようになりました。そしてその依存度はかなりのもので動物の狩猟を禁止して、稲作のみを推奨する規則さえ平安時代の前にあったともいわれています。現在までの2000年間くらいのあいだは現在ほど精製されていない穀物を主食としてきたことは間違いありません。しかもこの1000年くらいの間は他の人種が大量に入ってきたということはありません。この島国日本の中にコメアレルギーを先天的に持っている人が居たとしたら、ここ千年の間に自然淘汰されなかったのでしょうか。そしてコメアレルギーや大豆アレルギーというわかりやすい病気がなぜ現代になって出てくるのでしょうか。
食物アレルギー疾患を議論するときに必ず、抗原を異物だとか、異種たんぱく質だとかいう表現をしますが本当にそれらは異物で非自己なのでしょうか。全ての生物は自然の中で生きているというより生かされています。生かしてもらうには様々な異物を受け入れなければならないはずで、免疫系が反応する機能を持っていたとしても、反応しないようになる機能もまた持ち合わせているはずです。
また人間にとって蛋白質、アミノ酸は必須にも関わらず、食物アレルギー関連の書籍では危険で過度な蛋白質除去や断食を薦めたり、根拠もなく必ず和食が良く、洋食は悪いと書かれたりするものが多く、洋食を勧める本を見たことがありません。しかしアレルギーの原因がわからないうちに、和食や断食などを薦めても、『原因』不明なままでは危険なままである可能性があります。それに和食だからといってアレルギーとは無縁かと言いますと、米、大豆はアレルギーになる可能性があるはずで、特に大豆アレルギーは珍しくありません。また和食と洋食の蛋白源を比べますと和食は大豆などの植物性や魚などアレルギーを起こしやすい食品であり、洋食のタンパク源である牛肉、鶏肉、豚肉はアレルギーの陽性率は圧倒的に低いのです。
和食で大豆が原料の食品、醤油、味噌、豆腐、納豆、などであり、これらを食べるとアレルギーになるのかといえば、米と同様に本来ならばそうではないはずですが、素因説を肯定するなら和食であろうと洋食であろうと変わりがないはずです。和食を薦める根拠は一体どこにあるのでしょうか。単純に素因説やアレルゲン増大説を支持するだけではこういった根拠は生まれてきませんし、アレルゲン増大説と和食信仰は矛盾しています。
それに洋食中心で生きてきた欧米人は日本人に比べてアレルギーが多かったかと言えばそうではなく、欧米でもアレルギーは近代化に伴って増えてきており、状況はそれほど日本と違いはありません。あるとすればアレルゲンの分布が違っていますが、感作した抗原ほどアレルゲンになっている傾向はほとんど同じです。
そしてもし洋食を否定し、和食を肯定するならばそれは現代の洋食に原因があるということになります。そしてその原因が現代の和食に含まれていないという根拠が必要です。
次は免疫系について簡単ではありますが説明しておきます。
ここでアレルギー体質という言葉も新たに定義しておきます。一般的にアレルギー体質とはアレルギーになりやすい体質と、とかく曖昧な使われ方がされていますが、アレルギーという病気の原因を別に設定して考えれば、このような使い方はできませんから、改めて定義しなければならなくなります。そこでこれからはアレルギー体質とはある抗原に対して免疫が反応を起こすようになってしまった状態の事とします。
遺伝と情報・・・アレルギーに限らず、最近は何でも遺伝子のせいにしてしまう風潮があります。もちろんどんな思考様式を持っているかは自由ですが、何でも遺伝のせいにして努力をしない口実にする傾向がみられます。また医師や研究者が原因のわからない病気を根拠もなく遺伝的要因にしてしまうのはかなり危険な考え方です。特に統計上、明らかに有意な相関関係があったとしても、医学的、科学的に因果関係が証明されないうちから、勝手に「アレルギー素因」などと言葉を創り出して、患者や一般の人に対して説明するのは百害あって一利なしです。そのような説明をするならば「原因はわかりません」といった方がまだ潔く、社会的責任を果たしたことになります。しかも困ったことに生物の情報とは全て遺伝子に入っていると考えているようです。これも大きな間違いで、遺伝に限らず、全ての情報はそれ単独で意味が決定されるものではないのです。(設計図があっても大工や建築資材がないと家は建ちません)
僕が気に入らないのはこの言葉はまるでアレルギー疾患の患者が先天的であるように使われていることです。アレルギー素因というものが遺伝的に異物を受け入れないという素因だとしたらそんなものがなぜ生き残ったのでしょう。 よって私は遺伝的に異物を排除してしまうという素因は存在しないといいたい。
また一般の人は常に言葉の定義についてよく考えておくべきです。例えば『素因』という言葉はどういう定義なのかということを知らないでわかったつもりになって使いますと、例えば病気の原因がわからないうちから、例えば「自分は『アレルギー』だから子供はつくらないほうがよい」などという結論を導き出せます。しかしそれが完全に遺伝として証明されているのかよく考えてみるべきでしょう。
ここまでアレルギーというのは非自己の抗原に異常に反応してしまう病気だというのが一般的でした。一体、自己、非自己という分類は免疫系のなかにあるのでしょうか。
さて普通はその説明を免疫学から始めるのでしょうか、ここでは数学から始めてみたいと思います。
数学には同値類という概念があります。
集合Xの任意の要素(元)をa,b,cとする。
1.a〜a
2.a〜b → b〜a
3.a〜b かつ b〜c → a〜c
また要素の間にある関係を~で表すとし、その関係〜が上の三つの条件を満たすとき、関係〜を同値関係、その集合Xは関係〜に対して同値類という部分集合ができます。またある同値類の要素aを代表元といいます。
三つの条件は数学的で免疫系がもっている条件とはかなり似たようなメカニズムを細胞性免疫系が採用しています。免疫系には細胞性免疫と液性免疫という二つの免疫系があり、細胞性免疫のなかで、MHCなどの細胞膜上にある抗原によってどの細胞が自分たちの細胞であるかを識別するという機能がありますがこういう機能を、数学で言うところの同値関係〜だと思うことができます。
つまり異なったHLA抗原を持つ細胞が体内に入り込んできても、その細胞を拒絶することで一種の同値関係が成立することで複数の細胞が一つの個体としてのアイデンティティを持つのです。このようなメカニズムがアイデンティティという結果をもたらすことで起こる不都合もあり、例えば臓器移植を行う際の拒絶反応などもその一つです。また細胞性免疫の場合はその免疫系にとって、同値類を決めるためのHLA抗原の代表元の決定は遺伝子が一つに決定してくれていますので通常混乱は起こらないでしょう。つまりこのような細胞性免疫においては自己、非自己という分類は成立しています。
ではアレルギーで問題となる液性免疫の場合はどうでしょうか。液性免疫では抗原に反応するための免疫グロブリンという抗体をB細胞という細胞が作っています。免疫グロブリン(immuno-globulin)を略してIgといい、それは5種類あることがわかっており、正常な人の血中における割合の順番にIgG(60〜80%),IgA(10〜20%),IgM(7〜8%)、IgD(0.1%)IgE(0.002%)があり、特性が異なります。免疫グロブリンの主力はIgGとIgAであることとがわかりますが、典型的なアレルギーではIgEが指数関数的に増加して過剰な炎症等を引き起こしていると考えられています。
Igを作るB細胞に指令を出している細胞がヘルパーT細胞(Th細胞)です。ランダムに発生したT細胞を胸腺という心臓の上にある臓器で、なんらかの基準(例えばその抗原に感作している)を満たすT細胞は自殺(アポトーシス)によって排除していることが分かっています。
また抗体の産出については、これは現在の免疫学でわかっている部分では、おおよそ遺伝子からランダムな組み合わせによって100万種ほどの抗体を造り、突然変異を含めると700万種ほどだといわれています。つまり、数百万種の抗体があるといえます。
そしてTh細胞を大まかに二つに分けますと、IgG抗体などを作るB細胞に指令を出すヘルパーT細胞をTH1,IgEなどの場合はTH2と、抗体の種類ごとにヘルパーT細胞を分類します。これはよくシーソーに例えられますが、この二種類のヘルパーT細胞には一方が上がれば、もう一方は下がる機能があります(ネガティブフィードバックと呼びます)。
なぜ自分の体を構成する成分に抗体を作ってしまう自己免疫疾患が起こるのかというと、いくつか考えられますが一つはさきほどの仕組みから、自分の体を構成する成分に抗体を作る指令を出すT細胞が胸腺のアポトーシスという教育を受けず、卒業してしまった場合です。実際にはそういったT細胞はいくつかある場合があるそうで、それがなぜ反応する場合とそうでない場合があるのかは、免疫寛容にするための他のメカニズム(例えばTs細胞がB細胞の働きを抑制するなど)があるとしています。免疫寛容なるものがどういった原理で行われるのかについても正確にはわかりません。
そしてここで食物アレルギーを思い出してみますと離乳食を始めたばかりの赤ちゃんが食物アレルギーという場合、母胎ですでに食物に含まれる抗原に感作していると考えられますが、どうしてIgE抗体を作る免疫系が残ったのかという疑問が生じます。(単純にアレルゲン増大説を支持するならこれでいいのでしょうが、このときに食べ物などの抗原が自己抗原として分類されなかったのでしょうか。)
このようにみてきますと胸腺とT細胞のメカニズムのなかのどこに自己、非自己という概念が存在したでしょうか。MHCのような単純な免疫機構ですら、同値類という概念からいえば、自己、非自己という概念は免疫システムの中にある決まった法則の結果でしかないといえます。つまり自己、非自己というのは免疫同値類と呼ぶべき、同値関係のような法則をみたすメカニズムがもたらした結果であり、構造でしかないのです。液性免疫の場合ではさらにどのような抗原が自己か非自己かという扱いは私たちが思っているほど簡単ではありません。
ダニ、花粉、カビ、虫、他人、などは確かに私たちからみて非自己です。しかしこれを免疫が非自己として抗体を作ることが果たして正常な反応なのでしょうか。米、大豆、小麦、卵、牛乳、腸内細菌、皮膚常在菌などまで含めて、食物アレルギーなどの事例を考慮すれば、非自己だからアレルギーが起きるのは当然という安易な思考は正しくありませんし、もしそうなら自己免疫疾患も存在しないでしょう。
次にTh1とTh2が持つシーソーのような機能から、アレルギーの原因として過剰衛生説や寄生虫排除説を取り上げてみます。
同値類に関して ・・・ いきなり同値関係とか同値類とか言い出してもイメージが湧かないかもしれませんので少し例を出して説明してみたいと思います。
例えば政治家の集合を考えて、関係〜を「政治家Aと政治家Bは同じ政治的思想を持つ」としますとこの関係は同値関係を満たしています。ではその同値関係による同値類とは一体どんなものでしょうか。それは政党というグループがこの場合の同値類なのです(現実の政党が本当に同じ政治思想の集まりかどうかは疑問ですが)。
こういったことは政治家に限らず、学校のクラスのなかでも、会社の中でも見られる現象です。さらに政治の同値関係以外に「敵の敵は味方」という条件を追加しますと、政党がたくさんあっても最終的には二大政党に近づいてゆきます。また免疫学におけるヤーネのネットワーク説(免疫自体が抗原を持っている)も「敵の敵は味方」といった構造になっています。
他にも同値類が様々なところにありますので、是非自分で同値類探しをしてみてください。
アレルギー諸説の中には、過剰衛生説というのもあります。過剰衛生説とは衛生的になり、感染症や寄生虫が減ったため、免疫系がそれまで反応しなかった抗原に対して過剰に反応するようになったという説です。寄生虫や感染症が減ったから、花粉に反応できるようになったという説明をしている医師や研究者もかなりいるようです。子供の頃に不衛生なほうがアレルギーにならないという説もあり、例えば昔の子供といえば鼻水を垂らしていて、そのためアレルギーの少なかったが、衛生的になってダニが増えてダニアレルギーになり、花粉が増えたから花粉症になったなどです。過剰衛生説は確かに一理あると思うかもしれません。
免疫系からも不衛生にするとTh1が増え、結果Th2が減り、IgEが減るという考えは確かに正しいように思うかもしれませんし、自分の経験からしてもインフルエンザや風邪の時は嘘のようにアトピーの炎症が一時的になくなります。どうやら免疫系がインフルエンザを優先して攻撃しており、その間、IgGを作るTh1が優位になり、結果としてTh2が減りIgEが減るのでしょう。ただ残念なことにインフルエンザが治ると2日後くらいにはもうTh2優位に戻ったのかアレルギーが出始めました。一体、どんな感染症ならばTh1が優位のままなのかという疑問がでてきますし、BCGなどの予防接種で免疫系に負荷をかけてTh1を優位にする治療法なども成功したという話は聞きませんし(試験管内では成功するでしょうが)、いくら現代が衛生的になったとはいえ、全ての人は無菌状態とはほど遠く、皮膚常在細菌叢や腸内細菌叢がありこれがT細胞に大きく影響を与えているはずです。またほとんどの人と共生している細菌類にすらアレルギーを起こしているような事例はどうなのでしょうか。例えばIgE抗体の量を調べますとブドウ球菌やカビ類などの細菌に対しても抗体を作っていることがわかりますが、なぜ液性免疫の主力であるIgG抗体ならば炎症が起きずに抗原を処理できるにもかかわらず、IgE抗体なのでしょうか。
また大人になってから花粉症になる人は統計的に見ても右肩上がりで、逆に免疫系の弱く、感染症にかかる機会そのものがすくない乳幼児のアレルギーは一体どのように説明したらよいでしょうか。現在では着実に過剰衛生とは無関係であったようなお年寄りにまでアレルギーが出ていますが、こういった現象をどのように説明すればよいのでしょうか。さらに先進諸国でも衛生的でない環境で生活している貧困層にも普通にアレルギー患者がいますし、先進諸国に来るとアレルギーになる人がいるのはどうしてでしょうか。
アレルギーは免疫力の異常、免疫ベクトルの向きの異常のようなものだとして、不衛生か、衛生かというだけでTh1とTh2の2次元ベクトルの向きが変わるのは納得したとして、各アレルゲンに対する症状がでたりでなかったりするのはどういうことでしょうか。ここでも単純に過剰衛生説を信じても問題は解決せず、疑問ばかりが湧いてきます。
衛生説の一つとして寄生虫説を考えてみますと、そもそもIgE抗体が寄生虫に対しての防御機能であるという考え方からと、寄生虫感染とアレルギー発症の相関関係からきています(寄生虫の専門家が予算を獲得するために主張していると見ることもできますが・・)。しかし、その相関関係というのも発展途上国と先進諸国というあまりにも異なる環境下で、国内同士などのその他の環境が類似している場合の比較ではありません。仮に寄生虫説の相関関係を肯定するならその裏になにか因果関係があることになりますのですこし想像してみたいと思います。
そもそも寄生虫感染がどうして起こるかといいますと、それは飲食の際に寄生虫が私たちの体に入るからなのですが、一番の要因は汚染された水と野菜などだそうです。特に江戸時代までの日本でもそうでしたが人糞などを堆肥にしていて、堆肥のなかに寄生虫がいてそれを野菜などと一緒に食べることで感染していました。しかし現代人には寄生虫感染は起こっていませんし現代ではそれは基本的には起こりえません。なぜならば現代的な農業では農薬と化学肥料を使用しており、さらに上水道の設備が整ったからです。
寄生虫原因説を支持する人々の中には寄生虫が減ったから花粉症が増えたと説明しますがアレルギー疾患全体を見渡せば、乳児の離乳食を始める頃には食物アレルギーが起きている現状を考慮すると食物アレルギーは寄生虫などとは因果関係がないはずで、乳児というのは基本的に母乳しか飲ませませんから寄生虫感染とは無関係と考えるべきです。百歩譲って母体内に寄生虫がいて寄生虫抗原は妊娠期や母乳を介して赤ちゃんに感作するのだとしましょう。では寄生虫感染しなくてもIgE抗体の量が減り治癒する患者は沢山いますし、寄生虫を駆除したらアレルギーになったというのを聞かないのはどうしてでしょうか。つまり寄生虫原因説を肯定しながらさらに対処法にまで拡大して考えてみますと、仮説が正しければ、寄生虫の抗原を注射するか寄生虫をお腹の中で飼うなどの治療法が誰でも思いつきますが、実際にはそのような治療法はありません(失敗したという噂を聞いたことはあります)。
そもそも寄生虫説も寄生虫抗原にIgE抗体が反応するのであれば、Th2が優位でなければならず、寄生虫がいるほうがアレルギー体質になるのではという疑問も生じてきます。また、あるIgEが増えても総IgEが増えるだけで他のIgE抗体が減ることは経験上ないように思われ、寄生虫に対するIgE抗体が多くても他のアレルゲンを抑制すると思えません。
さて寄生虫と言いましても色々種類がいて、主に寄生虫アレルギーには二つあり、一つは人に寄生する蛔虫(カイチュウ)アレルギーと魚に寄生するアニサキスアレルギーがあります。私はアニサキスアレルギーで、IgE抗体の量を調べると蛔虫もアニサキスも同じ程度の抗体量がありました。蛔虫はわかりませんが、アニサキスでは盲腸ではないのかと思うくらい激しい腹痛などの症状があります。ただなぜそれほどマスコミで騒がれないかというと、世間一般では花粉が容疑者として疑われ、花粉の検査ばかりしかせず、自分が寄生虫アレルギーであることに気付いていない人が多いのです。特にサバなどは鮮度の悪い物はアレルギー炎症物質を含んでいてそれに当たることもありますが、血液検査の統計からいいましてもアニサキスの陽性率はとても高く杉花粉よりも高い場合もあります。ですから魚を食べてあまりにも症状が重い場合は寄生虫アレルギーを疑うことをお勧めします。
様々なアレルギーの説をあげてきましたが、それらの各説自体だけでなく、お互いに矛盾している点も多くどれも納得できそうにないでしょう。またまだ挙げていませんが様々な民間療法を含めた治療法と関係性を考えますと過剰衛生説と発酵食品は繋がるとしましても、その他のものは繋がらないものが数多くあり、アトピー性皮膚炎自体がそもそも免疫系と関係がないのではないかという専門家も少なくありません。
また私のアレルギー歴を思い出してみますと、ゴマ、酵母、アニサキス、カンジダに対するアレルギーは十代後半頃まではなかったと思われるのですが、子供が食物アレルギーになるのは消化器官が未発達だからという説も自分には当てはまらないですし、これらのアレルゲンを微量でも口にしますと症状がでることがあり、大人だからといって食物アレルギーが起きにくいという説明にもかなり無理があります。しかもこれだけアレルゲンをもつ体でもまだ米や小麦、大豆、オボムコイドは大丈夫です。このようなアレルギーマーチはどのように説明すればいいのでしょうか。
アレルギーに関して多くの人にわかりやすく説明するために使われる例で、アレルギーになるかならないかは抗原が入ってきて、ある程度溜まってくる(閾値を超える)と、ある日突然バケツから水が溢れるかのように症状が出るのだという例え話を聞いたことがないでしょうか。このバケツを使えばアレルギーマーチを説明できると思うかもしれませんが、一体そのバケツやコップやらは免疫システムのどの部分にあるというのでしょうか。これも安易にアレルゲン増大説を支持していることになりますが、そのバケツの容積がどこで決まっているのか誰も知りません。蜂アレルギーなど1,2回で症状が出る抗原は免疫学的に簡単に説明できますが、それ以外の膨大な抗原に関して一体どこでその抗原に関する情報を記憶しているのかその説明では実は全く謎なのです。
ですがこういったことを回避するには確率に置き換えればよく、確率ならば目に見えないバケツがまるであるかのように議論できます。つまり、ある抗原に対してアレルギーという症状がでるかでないかは確率であるというものです。
もしある人が日本の春を一度経験すると杉花粉症になる確率が5%(a)だとする。ならない確率は95%([1−a])で、二度経験して花粉症にならない確率は約90%([100-a]^2)、といった感じです。これならばバケツや閾値などを設定することなくアレルギーに関するいくつかの現象を説明できます。
このような状態を設定しておきますと身の回りにある抗原ほどアレルゲンになりやすいという相関関係は説明できます。それではその確率は何によって決定するのでしょうかと聞かれれば、アレルゲン増大説では抗原の量によって決まっている、遺伝説、素因説では遺伝によって先天的に決まっているとなるでしょう。
そして環境汚染説では、化学物質などの影響を受けて免疫系がただの抗原をアレルゲンとしてしまうことが起こる確率そのものが上がると考えればよいわけです。ですが環境汚染説を肯定するとしてもそのような確率を上げたりするものが存在するのでしょうか。次は環境汚染説を採用してみましょう。
では環境汚染説ではその抗原がアレルゲンになる確率を引き上げるものとして、花粉症では大気汚染にあるとされていて、排気ガスに含まれるDEPなどがアジュバントとして作用するといくつもの動物実験で明らかになっていますし、四日市や尼崎の公害では喘息が問題になっており、人体実験もすでに行われたと見ることもできます。(尼崎公害訴訟でも国は喘息と大気汚染の因果関係を否定したまま和解になりました)。
免疫学では本来、ワクチンなどの予防接種の効果を補助するためのものをアジュバントと呼んでいました。ですがこういった実験結果から、さらに広い意味でアレルギーのような負の修飾をしているものもアジュバントと呼ぶそうです。ただアジュバントというのはあくまで概念であり、そのアジュバントの作用メカニズム(機序)は様々で、アジュバントも水酸化アルミニウムアジュバント、完全フロイントアジュバント、百日咳菌アジュバントなどがあります。このアジュバントという概念を使えば、アレルゲン増大説と減感作療法のような治療法の矛盾は以下のように説明できます。
アレルゲン増大説は抗原にアジュバントが加わることでアレルゲンとなる(その確率が上がる)。
減感作療法では抗原は負のアジュバントがないので免疫系が元に戻る。
さきほど例に挙げた完全フロイントアジュバントとは抗原をミセル状にして免疫に感作させるものですが、そこにはミセル状にするには界面活性剤が必要になります。合成洗剤に含まれる酵素をアレルゲンではないのかといいましたが、中性洗剤はphに関係なく界面活性を失わず、洗浄力の強い合成界面活性剤は低濃度でも界面活性を持ち、それらが石鹸にはない強いアジュバント活性を持っていてもなんら不思議ではなくなってきます。(合成洗剤入りの歯磨き粉で舌や口の奥のほうまで磨く清潔好きな人が増える一方で、唾液腺の機能が低下したドライマウスの患者が増えているのも因果関係があるのではないかと思っています)
アトピー患者はシャンプーなどの石鹸を使わないようにするのは今や常識なのですが、アトピー患者のみならず、健康な人も合成洗剤の使用を止めるべきではないでしょうか。またアジュバントは複雑な構造を持った化学物質だけとは限らず、二酸化窒素のようなガスでもアジュバント活性を持っていることを示す動物実験の結果もありますが、二酸化窒素ということは活性酸素やフリーラジカルといったものもアジュバント活性を持っていると考えなければならず、しかも動物実験だけでなく人体実験である児童の受動喫煙でも有意にアレルギー疾患を増加させていることがわかっていますので、やはりその相関関係は明かであり、これらを総合的に判断するとタバコの煙に含まれるベンツピレンや一酸化炭素、自動車の排気ガスに含まれるDEP、NOxなどのもつ物理的影響(電子的)が悪化要因となり、こういったものをアジュバント活性があるのだとするならば、他にも水道水の塩素、オキシドール(過酸化水素水)、ヘアブリーチなどの化粧品、紫外線なども全て悪化要因と考えられます。車の排気ガスに始まり、界面活性剤などを挙げてみましたが、他にもどれくらいのアジュバントが野放しになっているのか想像すらできません。
環境汚染説を支持するとして、なにが原因なのでしょうか。それを知るにはあまりにも私たちの身の回りは容疑者が溢れています。しかも一つずつ調べていっても、免疫との明らかに関係があるとわかっているものは少なく、ほとんどのものは関係があるのかないのかさえわからないものばかりであることに気付かされます。
また毒性試験などを行っていると思うかもしれませんが、アレルギーの原因となる化学物質を見つけるには、その化学物質が免疫システムを狂わせたのかを抗原を使った後、抗体や免疫細胞を全て調べなければならずその毒物単独で試験している限りは決してそれが免疫毒性を持っていたかはわかりません。
胸腺という臓器が免疫システムのT細胞と関係がある重要な器官であるとわかったのですら1960年代頃のことなのです。それ以後確かに免疫システムについてはわかってきましたが、まだわかっていないことも多く、ましてやどの化学物質がどのように免疫系に作用するかなどということはほとんどわかっていません。どんな化学物質がT細胞や胸腺に作用するのかわかればアレルギーの原因がわかるかもしれません。
そのなかで有毒性の高さから研究がされている化学物質のなかにダイオキシン類があります。とりあえず容疑者としてこれについて推理してみるところから始めてみます。
まずここではダイオキシンを例に出して考えてゆきますがダイオキシンとかかれた部分を免疫毒物Xだと思って思えばよいのです。
ダイオキシンにはまずアレルギーとの関連性があるかということが問題ですが、ダイオキシンは胸腺を萎縮させていることが分かっています。つまりこれは胸腺のなかにある細胞が減ったことを意味します。
さらにダイオキシンが環境ホルモンとの疑いがありますが、環境ホルモンに限らず体内に自然に存在するホルモンですら自己免疫疾患に関与している可能性が高く、例えば女性が自己免疫疾患のリスクが高いのは女性ホルモンのせいではないかと考える研究者もいます。
だとするならばダイオキシンが環境ホルモンとして作用することでアレルギー体質がつくられると考えるのもナンセンスではないですし、ダイオキシンの有害性を訴える情報源には必ずといっていいほどアレルギーという文言が並んでいて、その相関関係はともかくとして因果関係はあるのでしょう。
水銀とアマルガム ・・・ アレルギーには金属に反応する金属アレルギーなどもあります。歯の詰め物などにも金属が使われており、これを除去するとアトピーが治るという書籍さえあります。主に使われているのは水銀の合金であるアマルガムです。多分これらに反応したアトピーなども存在するのでしょう。電池でも使われていましたが今は水銀0を謳っているものが増えました。
何が言いたいのかと言いますと決して歯の詰め物をセラミックに換えることを勧めたいのではなく、学校の歯科検診のように、重箱の隅を突くように見つけて「虫歯だ」と診断し早く治療しましょうというのは、まるで不必要な道路を造り公害を助長する公共事業のようです。そもそも歯は多少なりとも溶けたりするものですから、悪化しないために、親や学校がやるべきことはもっと他にあるのではないでしょうか。
やはり気になるのは胸腺が萎縮するとはどういうことであろうかという点です。これは想像してみるほかありません。色々と想像してみる前に、萎縮について調べてみますと、胸腺以外にも萎縮する臓器として脳があります。脳は細胞が詰まっておりそれぞれが私たちの経験した情報を記憶し、意識を創り出しているわけですが、老化や物理的衝撃など様々な要因で脳細胞が減ってゆきます。脳細胞が減っていくと脳の萎縮として観察することができます。そして脳細胞が必要以上に減ると様々な問題が発生します。そしてその問題は各細胞が果たしている役割というものは個々に異なるわけですから、出てくる症状は様々です。例えば、水俣病はメチル水銀によって脳の神経系が侵されるという公害でしたが、これを画一的な診断基準を設けようとするととてもできなくなります。なぜなら神経系はそれぞれの果たす役割が異なるわけですからどういう症状がでれば、公害だという基準を設けることにそもそも無理があります。過去に水俣の被害を受けていたであろう人々が年を取ることで発生する自然な老化現象としての脳の萎縮とあいまって、壮年期を過ぎてから感覚の麻痺などの水俣病特有の症状がでるという問題も起きています。
では胸腺の場合はどうでしょうか。胸腺とはT前駆細胞を分化、成熟させてT細胞を作り、不要なT細胞を排除する、いわばT細胞を教育する器官であることはわかっています。ではダイオキシン類などが体内にあると胸腺は萎縮するならば、一体T細胞にどのような影響がでているのでしょうか。
胸腺が萎縮するケースとして、本来、排除されないはずのT細胞が無くなる場合、それがTs細胞であれば自己免疫疾患やアレルギー、またはTh細胞であれば、ある特定の病原体へのB細胞による抵抗力を失うということを意味します。減感作療法では抗原を定期的に入れることでIgGを作らせてIgEの影響を減らすという説明において、そもそもなぜ普段の生活においてIgGが産出されなかったのかという疑問に対しては、もしTh1細胞が損傷を受ければ当然Th2が優位になり、IgGではなくIgEが増える場合もでてくるでしょう。
このような場合では生物が長い進化の中で獲得した病原体に対する抵抗力を失うことでもあるので、ありふれた病原体によって病気が発症するか、発症しないまでも何らかの影響が出ると考えるのはおかしいことではありません。例えば、現代ではニートやひきこもりの一因となっているであろう慢性疲労症候群と呼ばれる病気が問題になりつつありますがこういった病気の陰にもありふれた病原体がいくつも見つかる症例が後を絶ちませんが、ここでも免疫系の異常が指摘されています。CFS患者は疲労感を感じていますし、アレルギーとの強い相関関係も指摘されています。
また他の仮説としましては胸腺のT細胞を教育する側が損傷を受けても本来排除されるはずのTh2細胞などが胸腺を出てきてしまうという考えもあるでしょう。このように考えてゆきますと多数のアレルギー諸説はありましたが環境汚染説で十分に説明が可能ではあるまいかという印象を持ちます。しかし環境汚染説を支持するとしてもなにか矛盾点はないかと一歩踏みとどまって慎重に考察してみましょう。
ここまで様々な説には矛盾だらけでうまく説明ができず、環境汚染が原因ではないかという説を支持してみましたが、それでも説明ができそうにない部分があります。
まず免疫系に関していいますと、ベンツピレンなどの大気汚染で花粉症になるという因果関係が成立し、その相関関係があるとしても、それでは食物アレルギーや動物アレルギーなどの他のアレルゲンの増加はどのように説明するのであろうかという点がでてきます。また大気汚染だけに注目しますとドイツが東西に分かれていた頃、東ドイツの方が大気は汚れていたのですが花粉症などのアレルギーは西ドイツの方が多かったというデータもあるそうです。さらに食物アレルギーならば残留農薬や食品添加物ではないかと言えるかもしれませんが、動物アレルギーならばやはり患者側の化学物質が体内に残留しつづけてその影響が出続けていると考えなければならなくなります。さらにメカニズムはわからないがとりあえず『ダイオキシン』がT細胞に異常をもたらすとしても、アレルギーの関与しないアトピーなどの様々な症状の変化の説明はできません。IgE抗体が関与していないアトピー性皮膚炎の症例は多数あります。IgE抗体の量が下がらなくても症状が改善する事柄はほとんどのアレルギー患者に見られます。なぜ抗体の量と関係なく良くなったり悪くなったりするのか。もういっそうのことIgE抗体の増加は別になんら原因がなくても起こることだとしてしまいましょう。
それで解決しない事柄を、アトピーとアレルギーに絞って考えますと、この二つには強い相関関係があり、アレルギーからアトピーが発症するメカニズムを説明できる一方で、血中のIgE抗体が高くてもアトピーの症状が全くない状態が起こりうるのはどういうことでしょうか。アレルギー症状、特にアトピー性皮膚炎にみられる特殊な症状に関して合理的説明を免疫系の疾患として捉えるだけでは答えは出せません。また様々な治療法がそれぞれの効果を主張していますがそれを免疫学に照らし合わせようとすると理論的説明はオカルトの雰囲気を呈してきますし、アトピー関係の治療法は変な民間療法に限らず、ほとんど免疫とは無縁の治療法が多いのですが、それにしても多すぎるのです。免疫と無関係な治療法の実績は嘘なのでしょうか。特にアトピー関係に見られる症状の改善例はいくつもあります。
また反対に抗体が増えなくてもアトピーなどの症状だけが悪化するケースもあり、アレルギーに見える疾患が説明できるわけではなく、一番わかりやすい例は、乳児の場合、明らかにアトピーと診断される症状が出ていても、そもそも免疫システムがそれほどできあがっておらず、IgEを測定してもとても抗体の量は少ないのです。やはり免疫システムがほとんど働いていなくてもアトピーなどの症状は出てしまうものなのではないかという先ほどと同じ疑問にぶつかります。
さらにアトピーを細かく観察してみても多くは乾燥肌の人が多いように思われますが、乾燥肌でなければアトピーにならないという分類も成立しません。
これらをうまく説明できなければならないということです。ダイオキシン以外にも害毒のある化学物質は山のようにあり、自分の実体験に戻って候補者が絞れないだろうかと思いだし再検討してみます。
自分のアトピー性皮膚炎が発病に至った引き金について考えてみたと思います。まず異常にしかも急速に悪くなった高校二年のころです。元々、喘息に鼻炎とアレルギー疾患があったわけですから、アトピーがでても不思議ではありませんでしたが、しばらくの間はアレルギーと無縁でしたのでアレルギーマーチが進行したことは少し驚きでした。なにか発症の引き金になったかと考えてみますと二つに思い当たりました。
一つめは水道水 二つめは食事です。
一つめの水道水というのは塩素消毒された水道水のことで、集団食中毒などの事件があり、当時の地元水道局の塩素濃度データを調べてみますとそれまでは最低で約0.3ppmのときがあったりしたのですが、それ以来最低値がほとんど約0.7ppmになっていました。最高値、平均値はそれほど変化していませんでしたから、大したことではないかもしれませんが、アトピー発症という一要因になったかもしれません。実際、水道水に含まれる塩素をアトピーの原因としている人もいますが、水道水の塩素だけからの活性酸素やフリーラジカル説だけでアレルギーやアトピーを説明しようとするのには限界があります。やはり悪化の要因の一つではありますが原因とはならないでしょう。
しかしそうはいましても、やはり塩素消毒はかなり皮膚に影響を及ぼしていますので、水道水の塩素の上限をもう少し下げて欲しいのですが、そうするとやはり水道水の安全性が気になってきます。こういった問題は現在、本来の目的である水質改善には興味を示さず、「水道水、みんなで汚せば悪くない」といった風潮と共にほとんどの市民が水道局に責任を押し付けている現状ですので、とても水道局を攻める気になりません。そうしなければならないような水質であることのほうが問題です。
二、食事についていいますと、当時、大塚製薬の「バランス栄養食、カロリーメイト」をバランス栄養食などという宣伝文句が気になり、さっそく自分の体で試し始め、最初のうちはいくつ食べたか、学校の教室に箱を並べていたのですが次第に多くなりすぎてわからなくなり、結局何十箱くらいは食べました。皮膚炎が出始めて、痒くて夜寝られなくなるほどになったのがこの時期なのです。
しかし当時の僕はカロリーメイトと結びつけて考えませんでした。アレルギー体質なのは生まれた頃からですし、小学生の頃はアレルギー性鼻炎が悪くなりましたがカロリーメイトを食べていたわけではないからです。しかし今から振り返れば、その考え方が間違っていて、カロリーメイトなどの食品に原因物質が入っていたのです。原料を挙げますと、まず小麦粉、マーガリン、卵、カカオ、ビタミンなどがあります。
今まで挙げてきた様々な条件であるアレルギー諸説の、「なぜ現代になって増えたのか」、「活性酸素などの影響」、「乾燥肌(乾燥性敏感肌)のようにバリア機能が壊れた皮膚」、「和食と洋食」、『食品添加物』、『環境ホルモン』、「より具体的な素因」、慢性疲労症候群(CFS)などを一つの答えで結びつけることが可能なものがこの中に含まれていて、それによって一気に様々な現象の間にある因果関係や相関関係を説明できそうであるということを次に述べてゆきたいと思います。
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